深谷地区防火安全協会の県外視察研修に参加しました

富岡 2019年10月28日

ウェルネステラス富岡の施設長、宮川です。

この度、ウェルネステラス深谷のある、深谷地区防火安全協会様の県外視察研修に同行する機会を得、東京~千葉、神奈川方面に1泊2日の日程で参加してきました。

当初、東京消防庁で研修を行う予定でしたが、先の台風による災害救助活動などで多忙を極めており、急遽、四ッ谷にある消防博物館と四ッ谷消防署に備えられた最新の消防設備の見学を行うこととなりました。この度の、他に類を見ないほどの台風災害に対する消防職員の皆様のご尽力に敬意を表しますとともに、被害にあわれた皆様方に於かれましては、心よりお見舞い申し上げます。どうかお心を強くお持ちいただき、一日も早い復旧と、皆様が日常の生活に戻れるよう、お祈りしております。

 

さて、研修の話に戻りまして、今回の研修の中核となる四ッ谷の消防博物館ですが、10階建ての建物の中、見学が可能なのは5階以下、10階にはラウンジもあるとの事でしたが、今回は楽しむ時間はありませんでした。平成4年に開館後、現在では消防に関する展示が1万点以上あるとの事で、かなり見ごたえのある施設です。一度5階まで上がり、下りながら見学することで江戸時代から現代までの消防、防火の歴史が学べるとの事で、さっそく5階へ。

 

5階では江戸火消しの誕生と、当時の破壊消火の様子が学べます。

破壊消火とは、家事が起こった家屋の周囲の家を取り壊すことで、延焼を防ぐという消火方法です。日本で初の消防組織は万治元年(1658年)に幕府の命令書で出動した「奉書火消」であり、続き「大名火消」決められた方角を担当する「方角火消」重要場所を任される「所々火消」と組織が広がり、その後お給料をもらいながら火消しを行う「定火消」が生まれたそうですが、当時は武家の火消しは行うものの、町の火災は行わない状態であったとの事で、このことから「町火消」の制度が整えられていったとの事です。

町での家事をいち早く見つけるための火の見やぐらや、火を食い止めるための町づくり(区画整理)などの工夫が凝らされる中、町火消たちはいざ火事が起こった際、一番に駆けつけることを誇りとしていたとの事で、一番乗りをした火消は屋根に上がり、自らの組を周りに知らしめるなどして働きを競い合ったとの事です。正に、火事と喧嘩は江戸の華といったところでしょうか。

4階では、幕末以降、明治時代における移り変わりを学べます。

慶応3年の大政奉還により、明治天皇のもとに新しい政府が生まれます。この時点では新政府は廃藩置県や新憲法の発布など、国としてやらなければならないことが多く、消防の整備に力を注ぐことが出来ない状態でした。明治初期に市政裁判所、東京府、内務省などの消防を管理する部門による模索を繰り返し、明治13年に内務省警視局に消防本部が設けられることとなります。この時、武家の火消は廃止され、町方の火消は「消防組」と名称を改めていました。そして江戸時代から続いてきた考えを改めるために、明治7年(1874年)には「消防章程」、明治27年(1894年)には「消防組規則」が定められ、これまでの私設、公設様々だった組織がまとめ上げられていきます。

組織を整えることに加え、建築物もより燃えにくい、レンガや石造りの「不燃建築物」を使った近代都市を作る計画に乗り出し、通報手段も火の見やぐらから電話や非常報知器へと移り変わりを見せていました。ただ、この時点での電話は内部の伝達用で一般市民からの通報には使えないものであったとの事です。

大正時代に入ると、それまでの主流であった馬牽き蒸気ポンプから、消防ポンプ自動車へと変わっていきます。建物が大きくなることに対応したハシゴ車が登場したのも大正時代で、消防に従事する人は自動車時代の先駆けでもあったとの事です。

 

3階では、現代の消火活動の様子が学べます。

現代の消防署員の仕事は、消防の仕事だけではなく、レスキュー隊として救助の仕事に携わったりするほか、音楽隊が重要な式典で演奏を披露するなど、多岐に渡ります。東京消防庁の音楽隊は、今話題になっている東京オリンピックが昭和39年に行われた際にも開会式、表彰式の演奏を任されていたとの事です。

この階には、小さい子供が体験型で消火活動を学べる機材が有ったり、近隣の幼稚園の遠足コースとしてもつかわれる位、とっつきやすい空間となっていますので、ご家族連れで消防のことを学びに来ることもお勧めです。

 

スタート地点の地下一階に戻って、歴代の消防ポンプ車を見学します。

バスケット付きで初めてマイナスの角度まで下げることが出来るドイツ製のハシゴ車「マギルス」を先頭に、多くの命を救ってきた車両たちが展示されています。

これらの車両のなか、最新のハシゴ車が四ッ谷消防署には配備されているとの事で、実際に動かしてもらうことが出来ました。こちらは車椅子利用の方でも介助者と共に乗ることが出来るユニバーサルデザインが採用され、最大重量450㎏、最大定員5名の地上10階建て程度まで届く30mハシゴを備えた車両との事です。現在では四ッ谷と赤坂にしか配備されておらず、新国立競技場や東京オリンピックに備えて配備が進められているとの事です。

協会の先輩方が、楽しそうに空へと昇っていきます。

 

思ったよりもハシゴの伸びるスピードが速いのですが、一分一秒を争う状況ですから当然かとも思いました。過去は風にあおられての横揺れもあったそうですが、最近のものはかなり安定したつくりになっているそうです。

 

消防博物館での研修を終え、休憩をはさみながら千葉県の館山の宿泊所を目指しましたが、台風15号の影響で屋根にブルーシートを張った家が目立ちました。休憩の為に寄ったドライブスルーもこの通りです。

自然には勝てない事はもちろんなのですが、それまで作り上げてきたものが一瞬で壊される怖さと、長い時間がかかる復旧の難しさを感じました。

2日目も台風の影響で一部予定を変更しての研修となりましたが、事務局をおつとめ頂いた消防署員の皆様のおかげで、学びという点に加えて協会員同士、また当施設のある富岡市消防様にも防災についての組織入会をご仲介いただけるとの事で、多くのつながりを持てたということが一番の収穫であったかなと感じています。ウェルネステラス富岡でも、ご入居者様の安全を守ることはもとより、地域に開かれた施設として広く、地域防災にご協力できればと思っております。

投稿者:施設長